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人事制度が「おかしい」と感じる原因と解決策:自社の課題診断から改革の実行手順まで

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目次

なぜ6割以上の社員は人事制度を「おかしい」と感じるのか?データと構造から見える原因

62.3%が不満。データが示す人事制度への信頼の低下

人事制度が「おかしい」と感じる従業員は、なぜこれほど多いのでしょうか。Adecco Groupの調査によれば、62.3%の従業員が現在の人事評価制度に不満を抱いているというデータがあります。これは一過性の現象ではなく、組織の持続的成長に直結する本質的な経営課題です。特にBtoB SaaS企業のように変化が速く、人材の専門性が競争力に直結する業界では、優秀なエンジニアやプロフェッショナル人材の流出という形で、制度の不備がダイレクトに経営リスクへと転化します。

出典:アデコ株式会社「働く人の「人事評価制度」に関する意識調査」

従業員の不満ランキングと、背景にある「3つの構造的問題」

Adecco Groupの調査データをもとに、不満の上位要素をみていきます。

  1. 評価基準が不明瞭(62.8%)
  2. 評価者の価値観や経験によるバラつき(45.2%)
  3. 評価結果のフィードバック不足(28.1%)
  4. 評価が昇進・昇給に結びつかない(22.0%)
  5. 評価指標が現実と乖離している(20.6%)
  6. 評価指標が成果のみでプロセスが評価されない(17.5%)
  7. 年功序列が優先される(9.2%)

これらの不満は、個別の事象として捉えるのではなく、人事制度が抱える構造的な問題として理解する必要があります。多くの人事評価制度は、以下の3点でつまずいています。

  • 基準の曖昧さ(何を評価されているか分からない)
  • プロセスの不透明さ(どう評価されたか納得できない)
  • 待遇反映の不十分さ(評価されても報われない)

これら3つの構造的問題が、従業員の不満の原因です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

構造的問題1:基準の曖昧さ(何を評価されているか分からない)

不満ランキングで最も多い62.8%を占めるのが「評価基準の不明瞭さ」です。これは、上記ランキングの1位、5位、6位、7位に関連します。

評価基準が経営層や人事部の暗黙知となっており明文化されていない、あるいは形式的に存在していても抽象的で現場に浸透していない。こうした状況では、従業員は「何をすれば評価されるのか」という行動の指針を失います。また、会社が成長しているにもかかわらず、評価指標が小規模だった頃のまま改定されておらず、現在の組織規模や現場の実態と乖離しているケースも多く見られます。

構造的問題2:プロセスの不透明さ(どう評価されたか納得できない)

次に重要なのが「評価プロセスの不透明さ」です。これはランキングの2位と3位に関連します。いわゆる「上司ガチャ」と呼ばれる評価者によるバラつきや、フィードバックの不足がこれにあたります。

納得感は「結果」ではなく「プロセス」で決まる

ここで重要なのは、評価への納得感は「評価結果(SやAなど)」そのものではなく、「評価のプロセス」によって生まれるという点です。

納得感は、評価者が自分のことをどれだけ見てくれていたか(観察・記録・記憶)によって左右されます。

たとえ期待通りの評価結果でなかったとしても、上司が日々の行動を具体的に把握し、それに基づいて建設的なフィードバックを継続的に行っていれば、部下の納得感は高まります。逆に、日々の行動を見ていない上司から、評価時期に形式的なフィードバックだけが行われると、「なぜこの評価なのか」「普段の頑張りが全く伝わっていない」という不信感が募ります。

評価者の主観や経験値の差によるバラつきに加え、この「観察・記録の不足」と「コミュニケーション頻度の不足」が、プロセスの不透明さを生む要因となっています。従業員にとって理想の状態は、評価時期になった時には、すでに評価結果が「言わなくてもわかっている」状態です。

構造的問題3:待遇反映の不十分さ(評価されても報われない)

3つ目は「評価と待遇の連動性の欠如」です。ランキングの4位に該当します。

評価制度が昇進や昇給と明確に連動していない場合、従業員は「頑張っても意味がない」と感じます。特に成果に応じた報酬が期待される環境では、この問題は重要です。評価は高いのに昇給額が低い、あるいは昇格の基準が評価結果と紐づいていないといった状況は、優秀な従業員ほど強く感じやすく、離職の直接的な動機となります。

採用時と評価時のギャップが若手の不満を生む

新卒や若手社員から特に指摘されやすいのが「採用時と評価時のギャップ」です。

採用面接では「個性」「多様性」「ポテンシャル」などが評価されたはずなのに、入社後は会社が定めた定型的な行動要件や短期的な数値成果のみが評価対象となる。この評価基準のギャップが、「話が違う」「自分の強みが活かされていない」という感覚を生み、早期離職やエンゲージメント低下の要因になっています。これは、制度設計と採用戦略の連携不足が生む構造的な問題です。

「おかしな人事制度」を放置する企業がたどる3つの末路

不適切な人事制度を放置することは、組織に多大な悪影響を及ぼします。ここでは、その末路と、見過ごされがちな経済的損失について解説します。

末路1:エンゲージメントの低下と「静かな退職」の蔓延

人事制度の不備は、表立った反発よりも「静かな退職」という形で現れます。従業員は組織に在籍し続けますが、「努力しても正当に評価されない」と感じると熱意を失い、必要最低限の業務しかこなさなくなります。このエンゲージメントの低下は、水面下で進行し、気づいた時には業績悪化やイノベーションの停滞といった形で表面化するため、重要視すべきリスクです。

末路2:優秀な人材の流出と競争力の低下

不満を抱えた優秀な従業員は、より公正で納得感のある評価制度を求めて転職を選択します。特にエンジニアや専門職は市場価値が高いため、流出が続くと組織の技術力や専門性が急速に失われます。人材の流出は、組織全体の生産性を低下させ、競争力の源泉を失うことにつながります。

末路3:心理的安全性の欠如と組織の硬直化

制度への不満が蔓延すると、従業員はリスクを取ることをためらい、挑戦や新しい提案を避けるようになります。これは、組織の「心理的安全性」が損なわれている状態です。Googleの研究でも、チームの生産性向上に心理的安全性が重要であることが示されていますが、不透明で不公平な評価制度は、その土壌を根本から壊してしまいます。結果として、変化に対応できない硬直化した組織となってしまいます。

出典:Google re:Work「『効果的なチームとは何か』を知る」

試算:「何もしないこと」の経済的損失

人事制度改革にはコストがかかるため、経営層が投資対効果に懐疑的になるケースは少なくありません。しかし、「何もしないこと」のコストは、改革にかかる費用をはるかに上回る可能性があります。経営層を説得するためには、現状維持のリスクを定量的に示すことが有効です。

離職に伴う採用・育成コストの増大

従業員が1人退職した場合、後任の採用、オンボーディング、教育研修にかかるコスト(採用費、教育費、生産性ロスなど)は、その従業員の年収の50%〜150%に達するとも言われます。

例えば、年収700万円のミドル層の優秀な人材が、評価への不満を理由に年間5名流出していると仮定します。その場合、単純計算でも年間1,750万円(700万円×50%×5名)から5,250万円(700万円×150%×5名)もの損失が発生している可能性があります。人事制度の不備が離職率を高めているのであれば、これは毎年発生し続ける損失です。

生産性低下による機会損失

エンゲージメントの低い従業員は、高い従業員に比べて生産性が低いことが知られています。全社的なエンゲージメント低下がもたらす売上や利益の機会損失は、直接的なコストとして見えにくいものの、企業経営にとってはるかに大きな打撃となります。

これらの経済的損失を具体的に試算し、提示することで、人事制度改革が単なる「従業員の不満解消」ではなく、「事業成長のための投資」であることを明確に伝えることができます。

貴社の人事制度は大丈夫?課題特定のためのチェックリストとマトリクス

自社の人事制度が「おかしい」と感じても、具体的にどこに問題があるのかを特定しなければ、適切な対策は打てません。ここでは、貴社の現状を客観的に評価し、課題を特定するためのチェックリストをご紹介します。

人事制度の健全性を測る15のチェック項目

以下の15項目について、貴社の状況をチェックしてください。「チェックが入らない項目」が、貴社が優先的に取り組むべき課題です。

【視点1:制度設計と公開】

□ 1. 評価基準(等級定義、評価項目、評価尺度)が明文化され、全従業員に公開されている

□ 2. 評価指標は、現場の実態や現在の事業戦略に合わせて、過去1〜2年以内に見直されている

□ 3. 評価結果が、昇給・昇格・報酬にどのように連動するかのルールが明確である

□ 4. 評価項目は多すぎず、従業員と評価者が記憶し、日常会話で使える範囲(目安5〜7個)に絞られている

【視点2:運用プロセスと評価者の能力】

□ 5. 評価期間中、上司は部下の行動を具体的に観察・記録する仕組み(1on1の記録など)がある

□ 6. 評価者(管理職)に対して、評価基準の目線合わせやフィードバックスキル向上のための研修が定期的に実施されている

□ 7. 評価結果のバラつきを是正するための調整会議が適切に機能している

□ 8. 評価者は、評価エラー(ハロー効果や中心化傾向など)を理解している

【視点3:コミュニケーションと納得感】

□ 9. 評価結果のフィードバック面談が、全従業員に対して個別に行われている

□ 10. フィードバック面談では、評価の根拠(具体的な行動事実)が明確に伝えられている

□ 11. 期中において、月次など高頻度で、評価基準に基づいた対話(1on1など)が行われている

□ 12. 従業員は、評価プロセス(評価のされ方)について納得している

【視点4:報酬・処遇への連動性】

□ 13. 年功序列ではなく、役割や貢献度に応じた評価・処遇が行われている

□ 14. 等級別の報酬レンジ(給与の上限・下限)が設定されている

□ 15. 報酬水準は、市場と比較して競争力がある

結果の目安:

空欄が0~2個:比較的健全な状態ですが、継続的な改善の余地があります。

空欄が3~7個:いくつかの領域で重要な課題が見られます。早急な改善策の検討が必要です。

空欄が8個以上:制度が機能していない可能性が高く、根本的な見直しが必要です。

課題特定マトリクス:診断結果から打ち手を探る

チェックリストの結果をもとに、貴社の課題を構造的に整理します。これにより、どこから手をつけるべきかが明確になります。

課題の類型

主な特徴(チェックリストで「空欄」が多い領域)

原因

検討すべき打ち手(例)

制度設計不全

視点1(設計・公開)

制度そのものが古い、曖昧、経営と連動していない。

・等級制度、評価制度の再設計
・評価項目の見直しと具体化
・制度の明文化と公開

運用・能力不足

視点2(運用・能力)

制度はあるが、評価者のスキル不足や属人的な運用により機能していない。

・評価者トレーニングの強化
・キャリブレーションの導入
・評価マニュアルの整備

コミュニケーション不全

視点3(納得感)

評価後のフォローや日常的な対話が不足し、納得感が醸成されていない。

・1on1制度の導入 / 定着
・フィードバック研修
・対話を重視する文化醸成

連動性欠如

視点4(報酬・処遇)

評価が処遇に結びつかず、頑張っても報われないと感じる。

・報酬制度の再設計
・評価と報酬の連動ルールの明確化
・報酬レンジの設定

多くの場合、これらの課題は複合的に絡み合っています。優先順位をつけ、体系的な改善計画を立てることが重要です。

経営層を動かし、改革を成功に導く人事制度見直しの5つのステップ

人事制度改革は、組織全体を巻き込む一大プロジェクトです。ここでは、現状分析から新制度の導入・定着まで、改革を具体的に進めるための5つのステップを解説します。制度設計と運用設計の両輪で進めることが成功のポイントです。

Step.1:改革の目的設定とプロジェクト発足

まずは、何のために人事制度を見直すのか、その目的とゴールを明確に定義することです。

経営課題と連動した目的設定

単に「従業員の不満を解消する」ことだけを目的とすると、経営層のコミットメントを得ることは難しくなります。「〇〇事業の成長を加速させる人材を確保する」「次世代リーダーを育成する」といった経営課題(事業課題)と直結した目的を設定することが重要です。

プロジェクトチームの結成と経営層のコミットメント

人事制度改革は人事部門だけで完結できません。経営層、各部門のキーパーソン(現場のマネージャー)、そして必要に応じて外部の専門家も巻き込んだ、部門横断的なプロジェクトチームを結成します。早期に経営層のコミットメント(承認と支援)を取り付けることが成功の前提条件です。

Step.2:現状分析と課題の可視化

次に、現状の人事制度がどこでつまずいているのかを、定量・定性の両面から詳細に分析します。

  • 定量的分析:従業員エンゲージメントサーベイの結果分析、離職率の推移、評価分布の偏り、昇給・昇格の実績データ分析など。
  • 定性的分析:経営層、管理職、現場従業員への個別ヒアリング、退職者面談の記録分析など。

Step.1で設定した目的に対して、現状の制度や運用がボトルネックとなっている箇所を特定し、課題を可視化します。前章の「課題特定マトリクス」が役立ちます。

Step.3:新制度の設計(等級・評価・報酬の連動)

人事制度は「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の3つの柱が連動して初めて機能します。現状分析の結果に基づき、これらを再設計します。

等級制度:等級ごとに求める期待役割をシンプルに定義する

役割定義書に何行にもわたって期待成果や行動が記載されているなど、細かく設定しすぎると、等級定義による評価と評価制度での評価基準の内容が重複するなどして、どちらを優先すべきか混乱が生じているケースもよく見受けられます。また、環境変化が激しい昨今において、具体的な動きは日々変わると言ってもいいくらいです。このような状況のなか、ぞれぞれの等級に対する定義はシンプルにしておくことをおすすめします。

ポイントは1つ:

  • ポイントは1つで等級段階を多すぎないようにすることです。
    色んな会社さんの等級制度を見ると5‐7段階が多いです。多すぎると違いが分かりにくくなるため、違いが明確にできることを念頭に段階を決めましょう。

評価制度:「シンプル・イズ・ベスト」の原則と納得感の両立

評価制度設計の最大のポイントは、基準の明確化と納得感の醸成ですが、これを実現するための大原則は「シンプル・イズ・ベスト」です。

  • なぜ複雑な制度は失敗するのか

    精緻で詳細な行動指標を数多く設定しても、評価者である管理職がそれら全てを記憶し、部下の日々の行動を観察・記録することは現実的に不可能です。複雑な制度は運用負荷が高く、結局のところ運用されず、形骸化します。

  • シンプルで運用可能な基準設計

    評価項目は、評価者が記憶し、日常の会話で使える範囲(5〜7項目程度)に絞り込むことが重要です。

定量的な成果指標と、定性的な行動・プロセス評価をバランスよく組み合わせます。

納得感の醸成

  • 前述の通り、納得感は「評価者が自分をどれだけ見てくれたか」に左右されます。そのため、シンプルな評価基準を、月次1on1などの高頻度なコミュニケーションの中で継続的にすり合わせる仕組みを制度の運用として組み込むことが不可欠です。

【具体例】良い評価基準と悪い評価基準の比較

評価基準は、誰が読んでも同じ解釈ができ、日常のフィードバックで活用できるように、具体的な行動レベルで記述することが重要です。

評価項目

悪い例(抽象的で測定困難)

良い例(具体的で行動ベース)

チームワーク

協調性があり、チームに貢献している。

定例会議で自ら情報共有を行い、他メンバーの業務遅延を防ぐための支援を主体的に行った。

課題解決力

問題意識を持ち、主体的に行動している。

業務プロセスのボトルネックを特定し、改善策を提案・実行し、作業時間の削減に貢献した。

主体性

指示待ちにならず、自ら考えて行動している。

担当業務において、自ら課題を発見し、〇〇という改善策を提案・実行している。

報酬制度:市場競争力と内部公平性の担保

評価結果が報酬にどのように反映されるかを明確にし、従業員が「頑張れば報われる」と感じられる設計が不可欠です。

ポイント:

  • 評価結果と昇給・賞与の連動ルールを数式化・可視化する。
  • 等級別の報酬レンジ(上限・下限)を設定し、外部の市場データと比較して競争力を確認する。
  • 内部での公平性を担保するための調整原資の配分ルールを定める。

Step.4:シミュレーションと移行計画の策定

新制度をいきなり導入すると、想定外の混乱が生じる可能性があります。導入前に、現状の従業員データを用いて以下のシミュレーションを実施します。

  • 影響分析:新制度を適用した場合、誰の等級や報酬がどのように変動するかを試算する。
  • コスト分析:人件費総額の変化や、移行に伴うコストを算出する。
  • 移行計画の立案:既存従業員への影響を考慮し、段階的な移行措置(経過措置や調整給など)を検討する。
  • FAQの作成:社員への説明責任を果たすための想定問答集を準備する。

Step.5:導入と定着化

制度は作って終わりではありません。むしろ、どのように運用するかが成否を分けます。新しい制度を組織に浸透させ、意図した通りに運用されるように働きかけることが重要です。

納得感を最大化する運用サイクル:月次1on1の重要性

従業員の納得感を高めるためには、Step.3で設計した「シンプルな評価基準」を、日常のマネジメントに組み込む運用設計が必要です。その中核となるのが「月次1on1(月次面談)」です。

  • 理想的な月次1on1の運用プロセス
    • 基準の確認:評価基準(5〜7項目)を上司と部下の間で常に意識する。
    • 事実の共有:直近1ヶ月の具体的な行動事実について話し合う。
  • フィードバック(Good/More)
    • 行動事実に対し、評価基準に基づいてGood(良かった点)とMore(改善点・期待)を具体的に伝える。上司は、評価基準という「接続詞」を使ってフィードバックを行うことが重要です。
  • ネクストアクションの設定
    • フィードバックを踏まえ、次の1ヶ月のアクションを「部下本人」に決めさせる。これにより、自律性を高めます。

このサイクルを毎月繰り返すことで、評価基準と日々の行動が接続され、上司の「観察・記録・記憶」が強化されます。その結果、評価時期には、これまでのフィードバックの積み重ねとして評価結果が確定するため、部下は「言われなくてもわかっている」状態となり、評価結果に対するサプライズがなくなり、納得感が最大化されます。

全社への説明とコミュニケーションプラン

新制度の目的、変更点、具体的な運用ルール(特に1on1の目的と進め方)について、全従業員に対して丁寧な説明会やQ&Aを実施します。一度の説明で終わらせず、継続的に情報を発信し、疑問や不安を解消することが求められます。

管理職(評価者)トレーニングの徹底

新制度の成否は、運用を担う管理職のスキルにかかっています。評価者研修を徹底的に実施し、評価基準の理解、評価エラーの防止だけでなく、特に月次1on1のスキル(傾聴、観察、フィードバックの方法)の向上を図ります。ロールプレイングなど、具体的なスキル習得に重点を置きます。

運用のモニタリングと継続的な改善

導入後も、制度が適切に運用されているか(例:1on1が計画通り実施されているか、質は担保されているか)を定期的にモニタリングします。従業員サーベイなどを通じて現場の声を集め、必要に応じて制度や運用ルールを微調整していくPDCAサイクルを確立します。

未来志向の人事制度設計と組織文化

最後に、これからの時代に求められる人事制度のあり方について、いくつかの視点を提示します。

「成果主義」から「役割主義」への不可逆なシフト

1990年代以降に広がった「成果主義」は、短期的な数値目標に偏重するなどの弊害が指摘されてきました。現在では、単なる成果だけでなく、担う役割や組織への貢献度を重視する「役割主義」へのシフトが加速しています。この流れは不可逆的です。

心理的安全性を高めるリアルタイムフィードバックと1on1

年1回や半期に1回の評価面談だけでは、従業員の成長支援や納得感の醸成には不十分です。日常的な業務の中でのリアルタイムフィードバックや、高頻度(月次など)の1on1ミーティングが、ますます重要になっています。

1on1は単なる雑談や進捗確認の場ではありません。評価基準に基づいた継続的な対話を通じて、上司と部下の信頼関係を構築し、納得感を高めるための重要な仕組みです。この継続的な対話こそが、心理的安全性の高い組織文化を醸成するための基盤となります。

まとめ:人事制度改革は、未来への投資である

人事制度が「おかしい」と感じる従業員が6割を超える現実は、経営としてしっかりと向き合うべき課題です。特に、優秀な人材が競争力の源泉となる組織において、人事制度の不備は、エンゲージメントの低下、人材流出、イノベーションの停滞といった形で、企業の未来を蝕んでいきます。

現状を打破し、納得感のある人事制度を構築するためには、以下の取り組みが重要です。

  • 現状の客観的な診断:チェックリストとマトリクスを活用し、自社の課題がどのタイプに該当するか(設計か、運用か、コミュニケーションか)を特定する。
  • 経営層の説得:「何もしないことのコスト」を試算し、改革の必要性を経営課題として提起する。
  • 制度設計の原則:制度設計においては「シンプル・イズ・ベスト」を原則とし、運用可能な範囲(5〜7項目)に評価基準を絞り込む。
  • 納得感の醸成メカニズム:運用においては、月次1on1を導入し、シンプルな評価基準に基づいた継続的なフィードバック(Good/More)を行う。これにより、評価時期には「言わなくてもわかっている」状態を目指す。
  • 改革プロセスの実行:5つのステップに基づき、現状分析、新制度設計、シミュレーション、そして運用定着を着実に進める。

人事制度改革は、「制度を作ること」がゴールではありません。従業員の信頼と納得感を醸成し、一人ひとりの成長と組織の成長を両立させるための「土台」を築くことが目的です。未来を切り拓くための投資として、人事制度の見直しに取り組んでいきましょう。

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