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AI時代の人事評価はどう変わるのか?〜AIに任せるか、人が向き合うか、実務家2名が語る評価の境界線〜

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こんにちは、​​FirstHR編集部です。

2026年7月15日(水)、セミナー「AI時代の人事評価はどう変わるのか? AIに任せるか、人が向き合うか」を開催しました。当日は40名を超える方にご参加いただき、盛況のうちに終了しました。

本セミナーでは、人事制度の「設計」と「運用」それぞれの現場に携わる実務家2名が登壇し、生成AIが人事評価にどこまで関与できるのか、その可能性と限界について議論を交わしました。

AIをHRの現場でどう活用するかという議論が盛んになる中、実務経験に基づいた等身大の知見が詰まったセッションの内容をレポートします。

 ※本記事の内容は、すべてイベント開催当日時点の情報です。

登壇者紹介

株式会社パーソル総合研究所

コンサルティング本部 マネジャー 中島 夏耶様

東京都立大学大学院経営学研究科修了。
大手調査会社において、見えざる資産の顕在化、それを活用した経営に関する調査・研究に多数参画。2018年3月より現職にて人事制度改革やキャリア自律支援等数々の組織・人事コンサルティングプロジェクトに従事。共著書『ミドル・シニアの脱年功マネジメント』(労務行政,2020) 、『経営戦略としての人的資本開示』(日本能率協会マネジメントセンター,2022)、研究レポート「人的資本の開示 調査研究レポート」(一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム,2021)

Professional Studio株式会社

取締役 FirstHR事業責任者 兼 コーポレート担当 秋元 優喜

東京都立大学大学院 経営学研究科修了(MBA)。専門領域は経営組織、HRM。
2010年6月株式会社うるるに入社し、「入札情報速報サービスNJSS」の事業部長、経営管理部長、執行役員 人事総務部長などを経て、執行役員CHRO 兼 人事部長を担当。10名→上場→400名の組織づくりを担う。うるる社時代、10年以上に渡り、事業・組織フェーズの成長にあわせて、適時、人事制度設計/改定を実施。
2023年4月にProfessional Studio入社後は、規模感も業種も多種多様な企業様の人事制度の設計・運用の伴走支援を実施。

※ここからは実際にイベント内で話された内容をダイジェストでお届けします!

秋元が語る、AI時代の人事制度設計における役割分担

秋元はまず、AI活用を考えるうえで押さえておきたい2つの概念を紹介しました。ひとつは「アルゴリズム忌避」、これまで人間が行ってきた判断をAIが代替することへの心理的な抵抗感を指します。もうひとつは「素朴概念」で、AIは論理的・客観的なタスクは得意だが主観的・感情的なタスクは苦手だという、多くの人が抱きがちな先入観のことです。

秋元によれば、アルゴリズム忌避が生まれる本質的な要因は、AIが自分の存在価値を脅かす存在として認識されてしまう点にあります。この抵抗感を和らげるためには、AIを「人間の代わり」ではなく、あくまで「サポーター」や「補助者」として位置づけることが有効だといいます。

そのうえで秋元は、人事制度設計のプロセスを分解し、それぞれの工程で人とAIの役割分担を整理しました。

  • 事業戦略を実現するための「求める人材」の設定:人の感情や事情が複雑に絡む領域であるため、AIに頼らず人間が担うべき工程
  • 等級制度設計・評価制度設計・報酬制度設計:AIが素案(たたき台)を作成し、人間が意思決定を行う領域。AIはあくまで「サポーター・補助者」という位置づけ
  • 仮評価/シミュレーション・運用に向けての検討事項の決定:人件費の増減など重要な判断が伴うため、人間が中心となって進めるべき領域
  • 社内説明用人事制度資料作成:AIが資料作成を担い、人間が最終確認を行う領域

最初の「求める人材の設定」以外の工程では、いずれも最終判断は人間側に置かれています。AIに素案作成や資料作成といった「たたき台」を任せつつ、最終的な意思決定と自社の言葉への翻訳は人が担う。そんな役割分担の考え方が示されました。

中島氏が語る、評価運用でAIに任せられること・任せられないこと

続いて中島氏は、評価運用のプロセスを「目標設定」「中間フィードバック」「評価」「評価フィードバック」の4段階に分解し、それぞれでAIがどこまで代替できるかを論点として提示しました。

具体例として紹介されたのが、パーソルホールディングスが開発した「目標支援コーチングAI」です。管理職の負荷を軽減する目的で、部下がAIと対話しながら目標の解像度を高めていく仕組みで、同様のサービスは近年、他社からも数多く登場しているといいます。目標設定が重要な理由について中島氏は、目標が曖昧なままだと組織の成長にもつながらず、評価への納得感も低下してしまうためだと説明しました。

一方で、評価そのものをAIに任せることには限界があると中島氏は指摘します。AIによる評価はあくまで入力データに基づいた「推論」になりがちですが、人事評価において本来重視すべきは「事実ベースの観察」だという考え方です。部下が上司について「ひどい上司です」といった主観的な相談をAIに投げかければ、AIはその前提を事実として扱ってしまいます。それが客観的な事実かどうかを見極めるには、人間の介在が欠かせません。

さらに中島氏は、パーソル総合研究所の調査結果から、上司との対話頻度が少ないほど評価が低くなりやすいという無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)が存在することも紹介しました。人事制度の目的が「報酬決定」だけであればAIに任せる余地もあるかもしれませんが、本来の目的である「個人の育成」につなげるためには、上司による観察と適切なコミュニケーションが不可欠だと語られました。

対談・質疑応答から見えた、AI時代の評価のリアル

後半は秋元と中島氏の対談、そして会場からの質疑応答を通じて、より実務的な論点が深掘りされました。

上司に求められる「観察」の質とは

秋元は、中島氏が述べた「推察ではなく観察」という視点に強く共感を示し、上司に対して具体的にどのようなアクションを求めているのかを尋ねました。

中島氏は、期中のマネジメントにおいては、とにかく「事実」を集めることを上司に伝えていると回答しました。忘れてしまうならメモを取ってでも記録すること、そして月1回の面談は必須であることを強調しました。対話の頻度が減ると評価への納得感が下がるという傾向は、同社の調査データにも表れているといいます。

AI導入で上司のマネジメント人数は増えるのか

会場からは、AIの活用によって上司一人あたりが見られる部下の人数(スパン・オブ・コントロール)は増えるのかという質問が寄せられました。

これに対して中島氏は、大きくは変わらないだろうという見方を示しました。事務的な作業はAIによって時間を短縮できる一方、部下を「観察」し「面談」する時間そのものは、AIが入ったからといって削れるものではないためです。秋元はこれを受けて、AI活用によって浮いた時間は、部下をより深く観察するために使うべきだという方向性を補足しました。

フィードバックコメントへのAI活用事例

会場からはもうひとつ、評価のフィードバックコメントを人事部門がAIで生成し、それを上司が確認・活用する仕組みを導入しているという事例共有もありました。言葉選びが得意でない上司がいても、会社として一定水準のフィードバック品質を担保できるようになったといいます。

中島氏はこの事例について、「評価において、納得度を高めるためには被評価者の強みや課題を示す"言葉のバラエティー"を多く持つことが重要なので、それをAIが補完することができるのであれば、興味深い」とコメントしました。

まとめ:「組織的公正」から見るAI時代の評価

セッションの最後に秋元は、「組織的公正」という理論を引きながら全体を総括しました。給与などの結果に関わる「分配的公正」、評価に至るプロセスに関わる「手続き的公正」、そして上司とのコミュニケーションに関わる「相互作用的公正」。この3つが揃うことで、評価への納得感が高まるという考え方です。

AIは「手続き的公正(報酬が分配されたり、決定がくだされたりするまでの、手続きや過程について個々が感じる正しさ)」を高めるうえでは大いに役立つ一方、最後の「相互作用的公正(結果に至るまでどれだけ個人的な配慮や誠意が示されたか)」は人間同士の信頼関係に依存するものであり、AIが代替するのは難しいかもしれないと秋元はコメントしました。

結局のところ、人事制度への不満の多くは「評価の根拠が不明瞭である」ことから生まれるものです。AI時代であっても、情報を開示し、誠実に対話するという基本姿勢は変わらない。そんなメッセージで、本セッションは締めくくられました。

FirstHRは今後も、企業の人事・組織課題に真正面から向き合い、人事制度設計の構築や運用の支援を通じて、事業成長に貢献してまいります。

次回のイベントも、どうぞご期待ください。

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