【上司への本音調査】約3割の中堅が「静かな退職」、若手が「離職・異動」へ?組織を停滞させる“言いにくさ”の正体
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近年、人材の定着や組織の生産性向上が企業の重要課題となるなかで、上司と部下の日常的なコミュニケーションのあり方が見直されつつあります。
そこで、職場におけるコミュニケーションの壁とそれがもたらす影響を把握するため、20歳~49歳の正社員262名を対象に調査を実施しました。
本調査の結果、多数の正社員が上司への“言いにくさ”を感じており、そのことが組織の停滞につながる行動変化を引き起こす傾向があることがわかりました。
【本調査における主な結果】
・正社員の7割が上司への「言いにくさ」を経験、最多は「改善提案」でミスや有給申請を上回る
・言えない理由最多、20代は「忙しそう」、30代は「関係の薄さ」、40代は「伝える自信がない」
・世代で異なる影響、20代の約3割が「離職・異動」、30・40代の約3割が「静かな退職」へ向かう
※調査方法や対象者などの詳細については、後述の「調査の実施概要」をご覧ください。
主な調査結果
1.正社員の70.4%が上司への「言いにくさ」を経験、最多は「会社への改善提案」でミスや有給申請を上回る
職場のコミュニケーションにおいて、部下はどのような内容を上司に「言いにくい」と感じているのでしょうか。正社員を対象に、ここ数年の間で直属の上司に報告や相談がしにくいと感じた経験のある内容について質問しました。

「特にない」と回答した割合は29.6%にとどまっており、直属の上司に対して何らかの「言いにくさ」を感じた経験がある人が70.4%にのぼるという結果となりました。
具体的な内容を見ると、「会社の方針や業務ルールに対する改善提案」が22.8%で最多となりました。これに「自身の体調不良やメンタルヘルスの悩み(21.8%)」「業務量の多さ(キャパオーバー)や残業の相談(20.1%)」が続いています。一方で、「自身の仕事のミスや遅延、トラブルの報告(18.7%)」や「有給休暇の取得や働き方に関する希望(18.1%)」は、全体のなかで相対的に下位にとどまりました。
日々の個人的な報告や手続きよりも、会社全体を良くするための「改善提案」のほうが高い割合となっている点が特徴的です。組織への建設的な声が、上司の耳に届きにくくなっている実態がうかがえます。
2.言えない理由は「状況が変わらない」の29.4%が最多、「評価への悪影響」が27.3%で続く
組織への建設的な声が埋もれてしまう背景には、どのような要因があるのでしょうか。上司に報告や相談がしにくいと感じた経験がある人を対象に、その主な理由について質問しました。

「言っても状況が変わらないと思うから」が29.4%で最多となりました。これに「機嫌を損ねたり、自分の評価が下がるのが怖いから(27.3%)」や「うまく言語化して伝える自信がないから(26.7%)」、「普段からコミュニケーションがなく、関係性が薄いから(25.9%)」が続いています。
報告や相談をためらう理由として、「伝えても無駄である」という徒労感や、「評価に悪影響が及ぶかもしれない」という自己防衛の心理が上位に挙がりました。前項で最多となった「改善提案」などの有益な声が、こうした諦めや評価への不安によって、上司へ届かずにとどまっている可能性が示唆されます。
3.言えない理由の年代別最多、20代は「上司の忙しさ・評価への不安」、30代は「関係性の薄さ」、40代は「伝える自信がない」
全体としては徒労感や自己防衛の心理が上位に挙がりましたが、年齢層によって直面している壁に違いはあるのでしょうか。同じ設問を、回答者の年代別に集計した結果です。

20代は「上司が忙しそうで、話しかけづらい雰囲気だから(33.2%)」や「機嫌を損ねたり、自分の評価が下がるのが怖いから(32.1%)」が上位に挙がりました。上司の多忙や機嫌をうかがう、上司という特定の個人への遠慮や恐怖が壁となっていることがわかります。
30代は「普段からコミュニケーションがなく、関係性が薄いから(36.2%)」が最多となり、「人間関係に波風を立てたくないから(31.8%)」が続いています。日常的な対話不足や軋轢を避ける心理など、職場周囲の人間関係への配慮が主なハードルとなっています。
40代は「うまく言語化して伝える自信がないから(34.8%)」がトップに挙がり、「言っても状況が変わらないと思うから(30.0%)」が続いています。自分の声では相手を納得させられないという自信のなさや、言っても無駄だという組織に対する無力感・諦めが声を上げることを阻害しているようです。
このように各年代を比べると、声を上げられない理由は年齢とともに変化していることがわかります。20代が上司という「特定の個人」への遠慮や恐怖が背景にあるのに対し、30代は波風を立てないための「周囲の人間関係」へ、そして40代は自分の力ではどうにもならないという「組織の構造全体」に対する無力感・諦観へと、壁と感じる対象がスケールアップしていく様子がうかがえます。
4.言いにくさの影響の年代別最多、20代は「会社への信頼低下」、30代と40代は「心理的負担」
ここまで声を上げられない背景を見てきましたが、それは社員の心理や意識にどのような影響をもたらすのでしょうか。上司に報告や相談がしにくいと感じたことで、仕事や職場に対してどのような変化があったかを質問し、年代別に集計しました。

20代は「上司や会社に対する信頼感が低下した(35.0%)」が最多となり、僅差で「退職・転職や部署異動を考えるようになった(33.5%)」が続いています。会社や上司への失望から、組織へのエンゲージメントが低下し、離職や異動など外へ向かう意欲が高まりやすいことがうかがえます。
一方、30代と40代では共通の傾向が見られました。30代は「ストレスやモヤモヤなどの心理的負担を抱えた(29.5%)」が最多で、「必要最低限の仕事だけをこなすようになった(28.6%)」が続きました。40代は「心理的負担を抱えた」が38.6%とさらに高く突出し、次いで「必要最低限の仕事(28.0%)」となっています。
これらの結果から、コミュニケーションの壁がもたらす影響は、世代によって対照的な傾向を示すことがわかります。20代は「離職・異動」といった外への反発に向かいやすいのに対し、30代・40代は組織に残りながらもストレスを溜め込み、働き方をセーブする「消極的な姿勢」へと向かっている実態が浮き彫りになりました。
5.20代の33.5%が「離職・異動」を検討、30代・40代の約3割は「静かな退職」へ、世代で異なる行動変化
最後に、前項で見た影響のなかでも企業にとって直接的な課題となる「行動面の変化」に焦点を当て、その傾向をさらに深掘りします。先ほどの設問データから、「退職・転職や部署異動」と「必要最低限の仕事しかしない」という2つの行動変容を抽出し、年代別の推移を比較しました。

「退職・転職や部署異動を考えるようになった」割合は、20代で33.5%に上りますが、年齢が上がるにつれて低下し、40代では12.4%にとどまりました。対照的に、「必要最低限の仕事だけをこなすようになった」割合は、20代の22.2%から30代・40代では約3割(28.6%・28.0%)へと上昇しており、2つの行動の傾向が年代間でクロスする結果となっています。
若手層はコミュニケーションの壁に直面すると、離職や異動など「いまの環境から離れる行動」を起こしやすいことがわかります。対して30代や40代の中堅層は、会社にとどまりつつも意欲を閉ざす、いわゆる「静かな退職」の状態に陥りやすい傾向があります。現場の言いにくさを放置することは、若手人材の現場離脱だけでなく、中堅層の目に見えない生産性低下という、組織にとって深刻な二面のリスクをもたらしているといえそうです。
まとめ:安心できる職場をつくる、対話とフィードバックの仕組み
今回の調査を通して、職場のコミュニケーションの壁が、若手層の離職や異動、中堅層の「静かな退職」といった異なる形の影響として表れていることが見えてきました。年齢とともに声を上げられない理由が上司への遠慮から組織全体への諦めへと変わっていく傾向をふまえると、現場の雰囲気づくりといった個人の努力に頼るだけでは、解決が難しい問題なのかもしれません。
こうしたすれ違いを和らげ、社員が前向きに働ける環境をつくるには、コミュニケーションを個人の勇気やスキルに任せない工夫が大切になりそうです。たとえば、評価の基準をわかりやすく共有したり、定期的な対話の場を自然な仕組みとして取り入れたりすることも一つの方法です。日々の小さなフィードバックの積み重ねが、現場の声をすくい上げ、誰もが安心して働き続けられる職場をつくる第一歩になるといえるでしょう。
本調査結果をそのまま転載する場合を除き、調査結果の内容・グラフ・データなどを引用される場合は、出典元として本記事のURLをご記載いただくようご協力をお願いいたします。
調査の実施概要
調査機関 :自社調査
調査方法 :インターネット調査(株式会社ジャストシステム「Fastask」)
対象エリア:日本全国
対象者 :20歳~49歳の正社員
調査期間 :2026年3月23日~3月25日
有効回答 :262名
※本リリースでは、総務省の労働力調査における正規の職員・従業員の性年代別人口構成比に合わせて、ウェイトバック集計を行っています。
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執筆者
FirstHR編集部
FirstHR編集部は、人事制度設計や評価運用をはじめとした人事領域に関する情報を発信しています。 実務に活かせる学びや考え方を大切にしながら、企業や人事担当者の皆さまに役立つコンテンツをお届けしています。


