人事制度コンサルティングとは?費用相場・選び方・内製化の判断軸を解説

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「人事制度を整備したいが、コンサルに依頼すべきか迷っている」「人事制度コンサルティングの費用相場や選び方を知りたい」――こうした疑問や悩みをお持ちの経営者・人事責任者の方も多いのではないでしょうか。
人事制度コンサルティングは、専門知識のない社内で制度を一からつくる負担を減らせる一方、費用が数百万円規模になることや、コンサルがいなくなった後に運用が回らないとなる課題も存在します。とくに中小・スタートアップ企業にとっては、「依頼するか/自社でやるか」の判断が経営的に大きな意味を持ちます。
本記事では、人事制度コンサルティングのサービス内容や費用相場、選び方の基本を整理したうえで、中小企業が「コンサルへの依頼」「コンサル×内製化のハイブリット」「内製化」、どれを選択するのがよいのかを独自調査データを交えて解説します。
目次
人事制度コンサルティングとは
人事制度コンサルティングとは、企業の人事制度(等級制度・評価制度・報酬制度)の設計や運用を、専門家が外部から支援するサービスです。経営戦略との整合、組織課題の解消、社員の納得感向上などを目的として、企業の人事責任者や経営者の伴走役として動きます。
人事制度コンサルティングの定義
人事制度コンサルティングは、外部の人事専門家(コンサルタント)が、自社の経営戦略・組織課題に応じた人事制度の設計や運用を支援するサービスです。ヒアリング、現状分析、制度設計、社員説明、運用開始までを一貫して伴走するケースが多く、6ヶ月〜1年程度の中長期プロジェクトとなることが一般的です。
人事制度の専門家が外部から関わることで、社内の人事担当者だけでは見えない視点や、他社事例に基づくベンチマークを取り入れた制度設計が可能になります。
人事制度コンサルが対象とする3つの制度
人事制度コンサルティングの対象範囲は、主に以下の3つの領域です。
領域 | 内容 |
|---|---|
等級制度 | 職務・職能・役割に応じたグレード体系の構築 |
評価制度 | 成果評価やコンピテンシー評価など、公正な評価の仕組みづくり |
報酬制度 | 等級・評価と連動した給与・賞与テーブルの設計 |
これら3つは独立した制度ではなく、一体で機能して初めて意味を持つものです。コンサルティングを依頼する際は、3領域すべてをどう連動させるかを設計してくれる支援を選ぶことが重要と言えるでしょう。
人事制度コンサルへの依頼が増えている背景
近年、人事制度コンサルティングを検討する企業が増えている背景には、いくつかの要因があります。専門人材の獲得競争が激化するなかで、年功型の制度では市場価値に見合った処遇ができないこと。リモートワークの定着で「同じ時間・同じ場所で働く」前提の評価が成立しづらくなったこと。社員側の「実力主義志向」が高まり、評価基準の明文化を求める声が増えていること。AIの進化によりこれまでの業務自体が見直されてきていること。
こうした変化に対応するため、自社単独での制度設計に限界を感じ、外部の専門知見を取り入れたいというニーズが高まっていると言えるでしょう。
人事制度コンサルティングのサービス内容
人事制度コンサルティングのサービスは、大きく「設計支援」と「運用支援」の2つに分かれます。どこまでを依頼するかで、費用も成果も大きく変わってきます。
人事制度コンサルの設計支援とは
設計支援は、人事制度の枠組みを一から、あるいは既存制度の改定として作り上げるフェーズの支援です。具体的には、経営戦略・事業戦略のヒアリング、求める人材像の言語化、等級制度設計、評価制度設計、報酬制度設計、社員説明用ドキュメントの作成までを含みます。
このフェーズは3〜6ヶ月程度の期間で進めることが一般的です。コンサルタントとの定例ミーティング、経営層へのヒアリング、社員アンケート、現場マネージャーとのワークショップなど、相応の社内工数も発生します。設計支援だけで完結する契約形態を選ぶ場合は、設計成果物をベースに自社で運用していく前提となります。
人事制度コンサルの運用支援とは
運用支援は、設計した制度を実際に運用に乗せるフェーズの支援です。評価の運営、評価者トレーニング、社員説明会の実施、評価結果の集計サポートに加え、期中の月次面談や1on1のレクチャーなど制度を回し続けるための継続的な支援が含まれます。
設計だけでは制度が機能するわけではなく、最初の1〜2サイクルの運用支援を受けるかどうかで制度の定着度が大きく変わります。一方で、運用支援は月額20〜50万円程度の固定費や1回80〜160万円のスポットコンサル費用が発生することも多く、長期的なコスト負担を覚悟する必要があります。
人事制度の改定・リニューアル支援
すでに人事制度を持っている企業向けに、現行制度の課題分析と改定提案を行うフェーズです。組織規模の拡大や事業フェーズの変化に伴って、3〜5年に1度のペースで制度改定が必要になるケースが多くあります。
完全な作り直しではなく、アップデートされた経営戦略・事業戦略に基づいた「求める人材像」の明確化から始まり、現行制度の長所を活かしつつ、課題のある部分(評価項目の見直し/報酬テーブルの再設計/等級階層の見直しなど)に絞った改定支援を受けることもできます。
関連領域の支援(評価者研修・組織サーベイ)
制度設計・運用と並行して、評価者向けのトレーニング(評価面談スキル/フィードバック手法)や、組織サーベイ(エンゲージメント調査/離職要因分析)を提供するコンサル会社もあります。
評価者のスキルが不足していると、せっかく設計した制度も現場で機能しません。総合的に運用品質を高めたい場合は、関連領域の支援が含まれるかも選定基準にすると良いでしょう。
人事制度コンサル会社のタイプ別特徴
人事制度コンサルティングを提供する会社は、得意領域や規模感によって大きく4つのタイプに分かれます。自社に合うタイプを見極めることが、コンサル選びの最初のステップです。
大手総合系コンサルティングファーム
マーサージャパン、コーンフェリー、デロイト、PwCといったグローバル展開している大手ファームです。グローバル報酬データベース、組織開発、M&A後の人事統合(PMI)など、難易度の高いテーマに強みがあります。
規模感にもよりますが、費用は数千万円超になることも珍しくなく、対象は基本的に大企業が中心です。中小企業がこのタイプを選ぶケースは少ないですが、グローバル展開を視野に入れる場合は選択肢になり得るでしょう。
HR専門ブティック系の人事制度コンサル
人事領域に特化した中小規模のコンサルティングファームです。制度設計の深さや現場実装力に強みが出やすく、中堅企業の制度刷新案件で選ばれることが多くあります。
費用は規模感によって500〜1,000万円程度が相場で、設計から運用支援まで一貫した提案が受けやすい点が特徴です。担当コンサルタントの実力に成果が左右されやすいため、担当者の経歴と実績を契約前に確認しておきましょう。
個人コンサル・社労士事務所による人事制度支援
人事専門の独立コンサルタントや、人事制度設計を扱う社労士事務所のサービスです。費用は90〜200万円程度と中小企業でも手が届く価格帯で、社労士事務所の場合は労務リスクも同時にカバーできるメリットがあります。
ただし、提供できる支援範囲は個人や事務所の能力に依存します。複数業界の実績がない場合、自社業界特有の慣習を踏まえた提案が難しいケースもあるため、過去実績の確認が欠かせません。
クラウドサービス型(人事制度の内製化を支援するツール)
近年存在感を増しているのが、人事制度の設計・運用をクラウドツールで支援するサービス型のアプローチです。テンプレートやベストプラクティスをツール側に組み込み、企業が自社で制度を構築・運用できる状態を作ることに重きを置きます。
費用は月額数万円〜数十万円程度に収まることが多く、コンサル依頼と比較して大幅に低コストです。ただし「ツール導入だけで制度ができる」わけではなく、自社の人事担当者が主体的に制度を理解し運用していく姿勢が前提となります。コスト面でメリットが大きい一方、社内に推進役がいないと活用しきれないという特徴があります。
人事制度コンサルティングを依頼するメリット
人事制度コンサルティングを依頼することで得られるメリットは、主に以下の4点です。
人事制度設計の専門ノウハウを短期間で取り込める
等級制度・評価制度・報酬制度を一体で設計するには、相応の専門知識が必要です。書籍やWebの情報を集めて自社でゼロから組み立てるのは、人事担当者1名体制の中小企業にとって大きな負担となります。コンサルティングを利用することで、複数業界の事例や最新トレンドを反映した制度設計を効率よく進められます。
第三者視点で社内のしがらみを越えた制度設計ができる
社内だけで人事制度を作ろうとすると、「現行制度を大きく変えにくい」「経営者の主観が反映されすぎる」「特定の社員に配慮した設計になる」といったバイアスが生じがちです。外部コンサルの視点が入ることで、社内のしがらみを越えた客観的な制度設計が可能になります。
経営層や役員間で意見が割れる論点(評価のウェイト配分、報酬テーブルの幅など)についても、第三者の専門家が論点を整理することで合意形成が進みやすくなります。
制度設計プロジェクトの推進力が確保できる
人事担当者が本来業務(採用・労務・社員対応)と並行して制度設計を進めるのは、現実的に難しい場合が多くあります。コンサルに依頼することで、定例ミーティングのスケジュール管理、ヒアリングの実施、ワークショップの設計、社員アンケートの集計といった推進業務を外部に委ねられます。
「制度設計プロジェクト」として工程管理が機能し、半年〜1年の期間できちんとゴールに到達できる確度が上がる点もメリットと言えるでしょう。
業界・規模別のベンチマーク情報にアクセスできる
「うちの業界の標準的な評価制度はどうなっているか」「同規模企業の報酬水準はどのくらいか」といったベンチマーク情報は、社内だけでは入手しづらいものです。大手総合系やHR専門ブティック系のコンサル会社は、業界別・規模別のデータベースを保有していることが多く、自社の制度を相対的に位置づける材料を提供してくれます。
人事制度コンサルティングのデメリット・注意点
メリットがある一方、人事制度コンサルティングには中小企業にとって看過できないデメリットも存在します。依頼を検討している方は、以下の点もあらかじめ理解しておきましょう。
費用が数百万円規模で高額になりやすい
最大のデメリットはコストです。設計フェーズだけで200〜1,000万円、運用支援を含めると年間300〜1,500万円規模になることもあります。中小・スタートアップ企業にとって、この金額は容易に拠出できるものではありません。
とくに従業員30〜100名規模の企業では、「制度設計に投じる予算と、得られるリターンが見合うか」を慎重に見極める必要があります。コンサル費用の高さは、後述する「内製化」を検討する大きな動機にもなっています。
コンサルがいなくなった後に人事制度の運用が止まりやすい
設計フェーズで素晴らしい制度ができても、コンサル契約終了後に運用が回らずに制度が形骸化するパターンは少なくありません。これは人事制度コンサルティングで最も頻発する失敗パターンの一つです。
FirstHRが中小企業(10〜100名)の正社員267名を対象に2026年3月に実施した調査では、評価基準を理解していない社員は68.0%にのぼり、評価基準が明確に理解されている層の評価納得度は84.3%なのに対し、ブラックボックス化している層では24.5%にとどまる結果が出ています(出典:FirstHR「評価基準の曖昧さに関する調査」)。どれだけ立派な制度を外部コンサルに作ってもらっても、運用過程で基準が形骸化すれば、社員から見れば「ブラックボックス」と変わりません。
自社に制度設計ノウハウが残りにくい
コンサルに制度設計を任せきりにすると、社内に制度設計ノウハウが蓄積されません。結果として、契約終了後の制度改定や運用調整の場面で、再びコンサルを呼ぶ必要が出てきます。
中長期的に見ると、コンサル依存は人件費ベースで考えても割高になりがちです。社内で制度を理解し改善していける状態を作る視点を、最初の段階から持っておきましょう。
人事制度が「複雑化し」現場に合わないリスク
コンサルが提案する制度は、過去の事例の蓄積をベースに作られています。自社の事業特性・カルチャー・組織フェーズに合っていないと、表面的には体裁が整っていても、現場で機能しない制度になりがちです。
評価項目が多すぎて運用工数が膨大になる、報酬テーブルの幅が広すぎて運用が複雑化する、といった事象は、中小・スタートアップ企業ではしばしば見られる失敗例です。「コンサルに任せたから安心」という姿勢ではなく、自社の事情を主体的にコンサルへ伝え、提案内容を吟味する姿勢が求められると言えるでしょう。
人事制度コンサルティングの費用相場(企業規模別)
人事制度コンサルティングの費用は、企業規模・支援範囲・契約期間によって大きく変動します。ここでは人事制度設計コンサルティング会社へ依頼した際の企業規模別の費用相場の目安を整理します。
〜30名規模:設計のみ180〜360万円/設計+運用300〜480万円
従業員30名以下の企業の場合、人事制度の複雑さも比較的シンプルになるため、コンサル費用も他規模より低めです。設計のみで180〜360万円、設計+運用支援で300〜480万円程度が相場の目安です。
ただし、この規模の企業では「専任の人事担当者がいない」ケースが多く、コンサルに頼っても運用フェーズで担い手が不在になりがちです。設計だけ依頼しても運用に乗らないリスクがあるため、後述する内製化やクラウドツール活用とのトレードオフを慎重に検討しましょう。
〜100名規模:設計のみ360〜500万円/設計+運用520〜620万円
従業員100名規模になると、職種ごとの評価基準の差や、複数階層の等級制度が必要になり、コンサル工数も増えます。設計のみで360〜500万円、設計+運用支援で520〜620万円程度が相場の目安です。
この規模では、人事担当者が1〜2名いるケースが多く、コンサルとの連携で内製ノウハウを蓄積する余地があります。設計フェーズから人事担当者を伴走させ、運用は徐々に内製化していく形が現実的でしょう。
〜200名規模:設計のみ500〜700万円/設計+運用700〜900万円
従業員200名規模では、組織が複数事業部に分かれていたり、職種の幅が広がっていたりするため、制度設計の複雑度がさらに上がります。設計のみで500〜700万円、設計+運用支援で700〜900万円程度が相場の目安です。
この規模になると、HR専門ブティック系コンサルが選ばれることが多くなります。担当コンサルタントの経歴や、同規模企業での支援実績を必ず確認しましょう。
200名超:年間1,000万円〜
従業員200名を超える中堅企業では、グローバル展開やM&A後の統合などの複雑な論点が絡むケースも多く、年間1,000万円超の予算が必要になることが珍しくありません。大手総合系コンサルティングファームが選ばれる中心レンジです。
複数年契約で総額数千万〜億単位になるケースもあるため、経営層を含めた予算審議が必須となります。
人事制度コンサルの費用を抑える5つのポイント
費用を抑える主な方法は、以下の通りです。
- 支援範囲を絞る:等級だけ/評価だけ/報酬だけなど、ピンポイント依頼にする
- 設計のみで切る:設計成果物をベースに自社で運用する前提で、運用支援契約を結ばない
- クラウドサービス型を活用する:コンサル依頼ではなくクラウドツールで内製化を進める
- フリーランス人事に発注する:個人への報酬のみで済むため、コンサルティング会社のように間接費や管理費が上乗せされた単価と比べて、費用を抑えやすい傾向がある
- 相見積もりを取る:複数社から見積もりを取って、提案内容と費用のバランスを比較する
「フルパッケージで依頼するのが当たり前」と考えず、自社が本当に必要な支援だけを切り出すことがコスト最適化につながると言えるでしょう。
人事制度コンサルティングの期間・進行フロー
人事制度コンサルティングの期間は、支援範囲によって変わりますが、一般的には6ヶ月〜1年程度が目安です。短期間で完結することは少なく、社内の意思決定スピードも含めて期間を計画する必要があります。
人事制度コンサルの標準的な進行ステップ(6フェーズ)
人事制度コンサルティングの一般的な進行フローは、以下の通りです。
フェーズ | 主な内容 | 期間目安 |
|---|---|---|
1. キックオフ・現状把握 | 経営者ヒアリング/現行制度の棚卸し/組織課題の整理 | 1ヶ月 |
2. コンセプト策定 | 求める人材像の言語化/制度設計の基本方針決定 | 1ヶ月 |
3. 制度設計 | 等級・評価・報酬の具体設計/仮評価・シミュレーション | 2〜3ヶ月 |
4. 制度文書化 | 制度書類・評価シート・運用マニュアル作成 | 1ヶ月 |
5. 社員説明・運用開始 | 説明会/評価者トレーニング | 1〜2ヶ月 |
6. 運用フォロー | 評価結果のレビュー/制度改定の検討 | 運用開始6か月後に2〜3ヶ月 |
ここで重要なのは、フェーズ2「コンセプト策定」が制度全体の方向性を決める核心部分だという点です。このフェーズで経営者が主体的に関わらないと、できあがる制度は「コンサルの提案そのまま」になり、社員からも経営層からも納得を得にくいものになってしまいます。
設計フェーズの期間目安(3〜6ヶ月)
設計フェーズだけを切り出すと、一般的には3〜6ヶ月の期間が必要です。等級制度から始めて評価制度、報酬制度の順に設計し、整合性を確認しながら進めるためです。
規模感が小さければ「3ヶ月で完成」することも十分可能ですが、実践を積み重ねた経験豊富なコンサルタントではないと難しいでしょう。仮評価や経営層との議論を十分に重ねるには、4〜5ヶ月以上の期間を見込んでおくとよいでしょう。
運用フェーズの期間目安(6〜12ヶ月)
設計が完了したら、初回の評価サイクル(半期 or 通期)を運用フェーズとして伴走してもらう契約が一般的です。期間は6〜12ヶ月程度で、評価者トレーニング、運用課題の洗い出し、改定提案などが含まれます。
このフェーズを経るかどうかで、制度の定着度が大きく変わります。予算が許せば、設計+初年度運用までを1つの契約パッケージとして取るのが現実的でしょう。
コンサル期間が延びる典型的な4つの要因
実務上、当初想定より期間が延びる典型的な要因として、以下があります。
- 現行制度の運用実態が把握できておらず、現状分析に時間がかかる
- 経営層の合意形成に時間がかかる(特に役員間で意見が割れる場合)
- 報酬テーブルの試算で、人件費インパクトの試算が複数パターン必要になる
- 仮評価結果による分析と修正検討、実際の修正に時間がかかる
期間にはあらかじめ2〜3ヶ月の余裕を見込んでおくことをおすすめします。
人事制度コンサルティングの選び方
人事制度コンサルティング会社は数多く存在し、選び方を誤ると数百万円のコストが無駄になりかねません。中小企業が押さえておきたい選び方のポイントを5つ紹介します。
人事課題のタイプを自社で言語化する
最初に行うべきは、「なぜ人事制度コンサルティングを依頼するのか」を自社の言葉で言語化することです。専門人材の獲得が事業成長のボトルネックなのか、評価への不満による離職を止めたいのか、組織拡大に伴う処遇の不公平を解消したいのか。
依頼の目的が曖昧なままコンサルに会うと、コンサル側のパッケージ提案を受けるだけになり、自社に合わない高額な提案を受けてしまうリスクがあります。経営層と人事責任者でA4一枚程度の「課題整理メモ」を作っておくと、コンサル会社との初回面談が有意義になります。
設計のみか運用伴走まで必要かを切り分ける
コンサル会社には、制度設計に特化した「設計型」と、運用支援まで一貫して伴走する「運用支援型」があります。社内に運用ノウハウがある企業は設計型でよいですが、人事担当者が少なく運用に不安がある中小企業は運用支援型を選ぶのが現実的でしょう。
ただし運用支援型は月額固定費やスポットコンサル費用が発生するため、コスト負担との兼ね合いで判断する必要があります。後述する「内製化」「ハイブリッド活用」という選択肢も含めて検討してみてください。
担当コンサルタントの経験と相性を確認する
人事制度コンサルティングは、担当コンサルタントの実力に成果が大きく左右されます。会社のブランドだけで選ばず、必ず担当予定者と直接面談し、経歴・実績・進め方の相性を確認しましょう。
初回面談時に確認したい項目は、「自社と同じ業界・規模の事例があるか」「設計プロジェクトの経験年数は何年か」「過去の失敗事例から何を学んだか」の3点です。
また、できれば、コンサル会社でのコンサル経験だけでなく、実際に企業人事として人事制度を設計・運用してきた経験があるコンサルタントを選びましょう。
外部からの設計・運用支援の経験だけでは、企業が実際に直面する問題や社員の心情を解像度高く理解することはできません。人事制度設計・運用のクオリティは、企業の人事制度設計・運用の当事者として、どれだけ向き合って改善してきたかによって大きく差がでてきます。
なお、コンサルタントとの面談の際は、自社が抱える人事制度の問題、問題に対する打ち手の仮説について、どう思うか質問してみましょう。経歴書だけでは見えない人柄や、こちらの質問に対する反応の鋭さや深さ、実例を踏まえた対策案などで、本当の実力が見えてきます。
コンサル費用構造の透明性を確認する
「人事制度設計・運用一式500万円」のような大雑把な見積もりではなく、「設計」「運用」のフェーズ別、「運用」の「目標設定サポート」「評価運用サポート」といったメニュー別、また、サポート工数別に費用が明示されている見積もりを出してくれるコンサルを選びましょう。
費用の透明性が低いコンサルは、契約後に「追加要件」として費用が膨らむケースが珍しくありません。複数社から相見積もりを取り、フェーズごとの工数と費用を比較することをおすすめします。
契約終了後の運用引き継ぎ条件を確認する
コンサル契約終了後に運用が止まる失敗を避けるには、契約段階で「引き継ぎ条件」を明確にしておくことが重要です。
具体的には、「制度の運用マニュアルが残るか」「評価者向けのトレーニング資料が残るか」「契約終了後の質問対応はあるか」などを確認しましょう。これらが曖昧なまま契約すると、コンサルがいなくなった後に運用情報がブラックボックスになるリスクがあります。
人事制度コンサルに依頼しない選択肢|内製化
ここまでコンサル依頼を前提に解説してきましたが、中小・スタートアップ企業の選択肢の一つとして、「内製化」があります。これは、人事制度の設計・運用を外部コンサルに依存せず、自社の人事担当者と経営層で進めるアプローチです。
ただし、自社に人事制度設計・運用の知識がないなかで、いきなり「内製化」で進めたことで、人事制度が社員の業務の妨げになったり、事業成長を逆に阻害してしまうといった事例も多く見られるため、現実的には初回はコンサルタントに伴走してもらい、2回目から「内製化」を目指すことを強くおすすめします。
人事制度の内製化が選択される背景(コンサル費用との比較)
内製化を選択される理由は、本記事でも繰り返し触れてきたコンサルがいなくなった後に運用が回らない問題を回避するためです。自分たちが主体となって設計したものは自社で運用・改善できるため、制度の形骸化リスクが大きく下がります。
人事制度は外部コンサルに依存し続けるのではなく、企業が自ら設計・運用・改善できる仕組みへシフトしていくことが望ましいです(参照:人事制度の内製化に関する解説)。とくに中小・スタートアップ企業のように組織が変化し続けるフェーズでは、外部依存し続けるのではなく内製化していく方が目まぐるしく変わる事業戦略にも対応しやすくなります。
また、FirstHRが中小企業の正社員267名を対象に実施した調査では、「評価に納得していない」社員が41.4%にのぼり、目標設定を実施した社員の評価納得率は70.1%なのに対し、未実施では28.3%と倍以上の差が出ています(出典:FirstHR「人事評価の納得感調査」)。納得感を生むのは「立派な設計」ではなく「目標設定→評価→フィードバック」という運用サイクルが回っていることであり、運用を内製化できる体制こそが本質的な打ち手と言えるでしょう。
人事制度の内製化で対応できる範囲とできない範囲
内製化はあらゆる場面で万能というわけではなく、対応できる範囲とできない範囲を整理しておく必要があります。
内製化で対応しやすい範囲:
- 等級制度・評価制度・報酬制度の枠組み設計
- 評価項目・評価シートの作成
- 1on1や評価面談の運用設計
- 制度改定(事業変化に応じた継続的な見直し)
内製化が難しい・専門家連携が必要な範囲:
- 人事制度設計全体のロードマップ作成
- 経営戦略・事業戦略から「求める人材像」の導き方
- 運用開始後に起きやすい不具合を見越した対応
- 労務リスクが絡む論点(労働基準法対応、就業規則との整合)
- 大規模なグローバル展開や海外子会社との制度統合
- M&A後の人事制度統合(PMI)
- 数千名規模の大企業での複雑な制度設計
初回はコンサルタントに伴走してもらい内製化が難しい範囲も含めて設計や運用の経験を積み、2回目から内製化で対応しやすい範囲から自社だけで対応することで、現実的に内製化へとシフトしていくことができると考えられます。
また、FirstHRの調査では、「実力主義」を希望する社員が50.5%、評価基準の明文化を希望する社員は79.2%にのぼっています(出典:FirstHR「働き方の選択調査」)。社員が求める基準明文化は、内製運用でこそスピーディーに継続改善できる領域であるといえます。
コンサル×内製のハイブリッド活用パターン
先の述べたように、現実的には初回はコンサルタントに伴走してもらい、2回目から「内製化」を目指すことがおすすめです。
一方、「すべてコンサルに任せる」「すべて自社でやる」という二択ではなく、両者を組み合わせるハイブリッド活用も中小企業にとって有力な選択肢です。
主なハイブリッドパターンは以下の通りです。
パターン | 内容 | 適合する企業 |
|---|---|---|
設計コンサル+運用内製 | 設計フェーズだけコンサルに依頼し、運用は自社で回す | 設計ノウハウは欲しいが、運用コストを抑えたい企業 |
部分外注(特定領域だけコンサル) | 等級制度・評価制度・報酬制度のうち、自社で難しい領域だけコンサル依頼 | 限定的にコンサル知見を取り入れたい企業 |
スポット相談・壁打ち | 自社で進めつつ、月1〜2回コンサルにスポット相談 | 知識はあるが第三者視点を活用したい企業 |
クラウドツール+スポット相談 | クラウドサービス型ツールをベースに、必要時にスポット相談 | コスト最小化を狙う中小・スタートアップ企業 |
費用面では、年間100万円以下に抑えられる可能性あり、フルパッケージで500〜1,500万円といったコンサル契約を結ぶより、費用はだいぶ抑えられます。
人事制度の内製化に向く企業・向かない企業の条件
内製化を選ぶべきかどうかは、以下の観点で判断するとよいでしょう。
内製化に向く企業:
- 人事制度設計・運用にたずさわった経験がある社員が担当者である
- 人事担当者または経営者が主体的に制度設計に関わる意志がある
- 従業員規模30〜200名で、組織変化のスピードが速い
- 中長期的にコンサル依存から脱したい
- コンサル費用が経営的に重い
内製化が難しい企業:
- 人事制度設計・運用にたずさわった経験がある社員がいない
- 社内に人事制度の推進責任者(人事または経営者)が不在
- 短期間(3ヶ月以内)で制度を完成させる必要がある
- 法的リスクが高い領域の制度変更を予定している
- グローバル展開やM&A統合などの複雑な論点を抱えている
自社の状況を冷静に見極めたうえで、コンサル依頼/ハイブリッド活用/内製化の3択を比較検討することが重要と言えます。
人事制度コンサルティングでよくある失敗パターン
人事制度コンサルティングに数百万円を投じたものの、期待した成果が得られない企業には共通する失敗パターンがあります。依頼前にぜひ確認しておきましょう。
コンサルに丸投げで現場が納得しない制度になる失敗
「忙しいから」「専門外だから」と、経営者が制度設計プロセスにほとんど関与しないケースです。結果として、できあがる制度は「コンサルが作ったもの」となり、経営者自身が社員に説明できない・納得していない制度になってしまいます。
FirstHRが中小企業の正社員267名を対象に実施した調査では、評価基準が明確に理解されている層の評価納得度は84.3%にのぼる一方、評価基準がブラックボックス化している層では24.5%にとどまる結果が出ています(出典:FirstHR「評価基準の曖昧さに関する調査」)。コンサルに制度を作ってもらっても、経営者が社員に説明できないままだと、社員から見れば「ブラックボックス」と変わりません。
回避策としては、設計フェーズの少なくとも前半は、経営者が時間を確保してコンサルと議論する姿勢を持つことが欠かせません。
コンサルがいなくなった後に人事制度の運用が止まる失敗
設計フェーズで素晴らしい制度ができても、運用フェーズでコンサルがいなくなると現場で回せなくなるパターンです。これは中小企業で最も頻発する失敗パターンと言えます。
回避策は、制度設計の契約時点で運用サポートプランも契約すること。具体的には、評価者研修、期初目標設定サポート、中間評価サポート、期末評価サポートなどです。
制度が複雑すぎて評価者が運用できなくなる失敗
評価項目を細かく作り込んだ結果、評価のたびに膨大な工数が発生し、評価者が運用できなくなるケースです。「設計時点で素晴らしい制度」と「現場が運用し続けられる制度」は別物と考えたほうがよいでしょう。
FirstHRが全国の正社員262名を対象に実施した調査では、社員が人事評価を嫌う理由のトップが「フィードバック不十分」で37.2%、続いて「給与・賞与への反映不足」33.7%、「評価基準の曖昧さ」32.1%となっています(出典:FirstHR「社内制度の意識調査」)。複雑な制度ほど運用工数が増え、フィードバックがおろそかになるため、社員から嫌われる結果につながります。
回避策は、例えば行動評価(コンピテンシー評価)であれば、評価項目を全社共通で5つ程度に絞り込み、極力シンプルに保つことで、評価者の負担を最小限に設計することです。「シンプルに作る」ことを設計時の明確な制約条件として、コンサルに伝えるとよいでしょう。
ベンチマーク偏重で自社の事業戦略とズレる失敗
大手コンサルが持つベンチマーク情報は強力な武器ですが、ベンチマーク偏重になりすぎると、自社の事業戦略・カルチャーから離れた制度ができあがるリスクがあります。
「他社では○○なので」というロジックだけで設計された制度は、現場の社員からすると「自社の事業特性に合っていない」と感じられ、納得感を得にくくなります。回避策は、設計の起点を「他社事例」ではなく「自社の事業戦略と求める人材像」に置き、それをコンサルに繰り返し伝えることです。
評価基準が曖昧なまま運用開始してしまう失敗
コンサルが制度設計を完了しても、評価基準の具体例や運用ルールが言語化されていないと、現場の評価者は判断に迷い、結果として評価がバラつきます。「協調性」「リーダーシップ」といった抽象的な評価項目だけで、何をもってA評価・B評価とするのかが明文化されていないケースは少なくありません。
回避策は、「等級✕評価基準のマトリクス表」「評価者向け運用マニュアル」を成果物として納品してもらうこともありますが、重要なのは、運用を通じて全評価者が評価基準に対して共通認識をもって評価できるようになり、誰が評価しても同じ評価になるように評価スキルを上げていくことです。そのためには、評価者研修、期初目標設定サポート、中間評価サポート、期末評価サポートがとても重要で、最初はコンサルに伴走してもらって、これらの運用は必ず自社で回せるようにしていきましょう。
人事制度コンサルティングに関するよくある質問(FAQ)
Q. コンサルなしで人事制度は作れますか?
作ることは可能です。ただし、自社に人事制度設計・運用の知識がないなかで、いきなり「内製化」で進めたことで、人事制度が社員の業務の妨げになったり、事業成長を逆に阻害してしまうといった事例も多く見られるため、現実的には初回はコンサルタントに伴走してもらい、2回目から「内製化」を目指すことを強くおすすめします。
Q. 中小企業でも人事制度コンサルに依頼できますか?
可能です。HR専門ブティック系コンサルや個人コンサル、社労士事務所などは、中小企業向けのサービスを提供しています。設計だけであれば費用は年間180〜500万円程度が相場で、規模や支援範囲によって変動します。
Q. 依頼から運用まで何ヶ月かかりますか?
設計のみであれば3〜6ヶ月、運用開始まで含めると6ヶ月〜1年が目安です。社内の意思決定スピードや経営者の関与度合いによって、当初想定より2〜3ヶ月延びることもあります。スケジュールには余裕を持って計画しましょう。
Q. コンサル費用を抑えるにはどうすればよいですか?
費用を抑える主な方法は、①支援範囲を絞る(設計のみにする等)、②部分外注やスポット相談を活用する、③クラウドツールと組み合わせる、④フリーランス人事に発注する、⑤複数社から相見積もりを取って比較する、の5点です。「フルパッケージで依頼するのが当たり前」と考えず、自社が本当に必要な支援だけを切り出せば費用を抑えることはできます。
一方、費用を抑えても結果、きちんと運用できる、事業成長の実現につながる人事制度になっていなければ作った意味がなくなってしまいますので、自社に人事制度設計・運用にたずさわった経験がある社員がいない場合、初回はコンサルにフルパッケージで依頼することをおすすめします。
Q. コンサル契約を途中解約することはできますか?
契約条件によりますが、多くのコンサル会社では中途解約に解約金が発生します。契約前に「途中解約時の条件」を確認しておきましょう。長期契約を結ぶ前に、3ヶ月程度の試験契約を提案してくれるコンサルもあります。
まとめ|自社に合った選択肢を見極めるために
人事制度コンサルティングは、専門知識を活用し制度設計の質を高められる有力な選択肢です。一方で、数百万円規模のコストがかかること、コンサルがいなくなった後に運用が回らなくなるリスクがあることも事実です。
中小・スタートアップ企業が制度整備を検討する際に、最も重要なのは「コンサル依頼ハイブリッド活用/内製化」を冷静に比較検討し、自社の状況に合った選択肢を見極めることです。
「コンサルに頼むかどうか」ではなく、「自社で何を持ち、何を外部に頼るか」をまず決めることが、人事制度の整備を成功させる第一歩です。自社の状況と照らし合わせて、最適な進め方を検討していきましょう。
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執筆者
FirstHR編集部
FirstHR編集部は、人事制度設計や評価運用をはじめとした人事領域に関する情報を発信しています。 実務に活かせる学びや考え方を大切にしながら、企業や人事担当者の皆さまに役立つコンテンツをお届けしています。


